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寄贈品三夜連続放送:戀(こい) =糸し糸しと言う心= 第二夜

2008/10/12
こんばんは。皆様。

お待ちかね、S様からの寄贈品を掲載させて頂きます。

S様!本当に有難うございます。
皆様もどうぞ、S様の素晴らしい作品をご堪能くださいませ。

素敵だと思われましたらぜひ拍手から一言だけでも☆
公開なら外からでも確認可能ですので!
非公開でも私から必ずやS様にお伝えいたします♪


三夜連続放送(堂郁 恋人設定)
 戀(こい) =糸し糸しと言う心= 第二夜 『におい』 『こくはく』 『いかり』 です。


連載中の一部にR15指定程度の描写がある為、R15指定と致します。
15歳未満の方は閲覧、ご遠慮下さい。




秋の夜長 三夜連続放送 第二夜

戀 =糸し糸しと言う心=  作: S様



◆におい

「ねー、柴崎。これって本当かな?」
「なにが?」
「ひげそりの後の匂いって本当にするのかな?」
「何?気になるの?」
「…う、ん」
特に面白い番組もなかったため、古い映画のDVDを借りてきて二人してみていた時、
ある一場面で出た問いかけだった。
「そうね、シェービングクリームなら微かにするとは聞いた事あるわよ
 でも髭剃り後のクリームはあんまりしないみたいね」
「そっかぁ」
じゃあ、違うんだ。
柴崎の答えに、郁は映画を見つめたまま呟く。
「違うって、何が?」
「んー、前に髭剃り後のクリームは持ってるっていってたけど、
お泊りの時髭剃ってる所ってみたことないからその匂いじゃないんだなぁ、て」
「へぇ~」
柴崎の面白い物を見つけたとばかりの楽しそうな声に、郁ははっとした。
しまったっ!また内心の声が駄々漏れしていたか?
後悔しても、もう遅い。
「堂上班のメンバー全員、ひげ薄そうだもんねぇ」
内心冷や汗を掻きながら、そっと目線をそらす。
「笠原」
「……何?」
「物語でよくある
彼氏の吸うタバコを買ってきて、吸わないで香りを楽しむとか
あまつさえ、匂いに抱きしめてもらう
みたいな事しようとは、してないわよ、ね?」
「ぎゃぁ、何でわかるのよ」
真っ赤になって叫ぶ郁を見て、そんな昔のドラマのような事を今時しようとする方がびっくりだ!
とばかりに柴崎の方も呆気に取られる。
「止めてよっ!本気でする気だったの?」
「ち、違うの!そうじゃなくて!近いけど違うの~~っ!」

「精神安定剤代わり?」
「……っ、そうじゃなくて、競技前の儀式と言うか、ジングスと言うか、まじないと言うか……」
「同じ事じゃない」
「私的にはまったく違うのっ!」
郁の叫びに柴崎が耳を押え、一言。
「笠原、声大きい」
「ご、ごめん」
自分の声が大きい自覚がある分、素直に謝る。
「そもそも学生時代の大会でもそんな事していたの?」
笠原の言動を見ているとそんな事をしてるようには見えず、思わずでた柴崎の質問に対して郁の答えは明瞭だった。
「うんん、したことない」
「は?」
訝しげな柴崎の表情に、郁は苦笑を漏らす。
「今まで緊張した事って少ないの…」
覚えているだけでは、図書隊の面接試験、士長の試験、そして堂上との関係。
競技では、興奮から一点集中する瞬間、神経が冴え渡る感じがあるだけで、緊張した記憶がない。
逆に、身体を重ねてしばらく経つというのに、郁は未だにこの状況に慣れないでいる。
いい加減慣れてもいい頃合だというのに、一向に慣れる気配すらなく、デートの待ち合わせや、身体を重ねる前とか、心臓に悪い状態が続いている。
その事を素直に話すと

「じゃあ、どうして慣れないか、考えて見た事ある?」

何気ない柴崎の問いかけに郁は戸惑った。
考えた事も無かったから。
でも考えてみれば、試験等は別物として、堂上との関係はしばらく経つと言うのにどうして慣れないのか……。
最初に思い浮かんだのは【母】だった。でも何かが違うと思った。
次に思い浮かんだのは。陸上競技大会。
確かに緊張はしていなかったと思ったが、感覚が近い。
予選、本選、決勝戦と繰り返しても、その1回で全ての結果がでてしまう個人勝負の世界。
だからその一回一回に全力を注いでいた。
緊張しすぎて結果を出せない人もいれば、練習不足に泣く人もいた。
自分は比較的リラックスしていた方だと思っていたが、
それは今までの大会や、練習で得た経験に裏づけされていたからだったと思い至る。
経験から得た自信があったとしても、勝負は時の運。
だからその一回一回に全力を注いでいる感覚に近い。
でもだからこそ、堂上との関係になれないのだ。
こと恋愛関係の経験も自信もない。
だけど好きと言われたからそのまま大丈夫!なんて到底思えない。
だって、そのものよりも自分自身に自信がないから。
高い身長、ぺったんこの胸、女の子らしくもなく、自信なんて持てるはずもない!
いつ呆れられるだろう、これをしても大丈夫?嫌われない?
いつ別れてもおかしくないと思うから、デート1回1回が真剣勝負だ。
そんな状態なら慣れるはずもなく、いつも堂上から落ち着け、ゆっくりで良いといわれる。
………もしかして、堂上教官の方にも無理をさせているのだろうか?
自分以上に自分の思考回路と行動を認識している堂上ならば、自分の緊張を認識した上でフォローを入れてくれていたが、毎回毎回では面倒になってきたのだろうか?
思考がマイナスの袋小路へ突き進んでくのが自分でもわかる。

パンッ!
と手の平を叩く音に、ハッと意識が覚醒した。
前を見ると柴崎が真剣な珍しく真剣な表情をしていた。先ほどの音は柴崎が手を叩いたのだろう。
強張った郁の身体から力が抜けた。
「堂上教官が信じられないの?」
柴崎の問いかけに、郁は泣きそうな表情で呟く。
「…ちがう。自分に、自信がないの」
競技前に何人かの先輩達が各々リラックスするための行動だったり、アイテムをもったりする仕草が最初は理解できなかった。あの頃はそんな物に頼っていては、先に進めないと思ったから。
でも今ならわかる。
嫌われたくなくて緊張するのも、抱きしめられて安心するのも同じ人物なのだ。
すがりたい、落ち着きたい、嫌われなくない、と相反する想いが混ざり合って郁自身制御出来ない状態なのだ。
だから『おまじない』
出来るだけ落ち着く状態にして、挑もうとするから。
いつになったら慣れるかな……
郁自身先が見えない状態だった。





◆こくはく

その日は久しぶりに公休日の前日に待ち合わせをし、夕飯を取った後お泊りをする定番コースを予定していた。堂上が業務後最寄り駅の改札側で切符を買って待っていると、いつも通りに遅れてきた郁が堂上を見つけ、嬉しそうに駆け寄ってきた。
「遅れてすみません!教官」
弾んだ息のまま遅れた事を謝るのもいつもの事で、堂上はいい加減慣れれば良いものをと思うが、慣れない所が郁らしいと苦笑する。
「ん、…じゃあ、行くか」
郁の息が整うのを待ってから、手を繋ぎ改札を抜ける。これもいつもの事なのに、その度に嬉しそうな、少し照れたような表情をする郁が可愛くて仕方がなかった。
ただ、今日は自分の姿を見た時に、郁が少し安堵の笑みを浮かべたのを堂上は見逃さなかった。
それがまた、堂上の気を重くさせた。
堂上は、体育会系ならではの体温の高さがあるため、夜半になって肌寒くなるこの季節でもコートを羽織る必要はなく、Tシャツの上にシャツのみを羽織った姿だった。
郁の方も膝上丈の淡い色のフェミニンなスカートに、薄手のカーディガンを羽織っていて、すらりとした郁によくあっている。
楽しそうな郁に気付かれないように、堂上は小さくため息を吐いた。

食事後、予約していたホテルへと向かう。ふらりと立ち寄った創作料理の店が思いのほか美味く、食事とアルコールが進んだ。珍しく郁もワインを飲んでほろ酔い加減でご機嫌な様子だ。
部屋に入って落ち着いた所で、郁がそそくさと着替えを持って風呂へ向う。風呂へ入る順番は最初の頃に二人で決めた。その理由が何故か柴崎と小牧にバレ、爆笑されたのは決めてすぐの頃だ。
そんな事まで思い出し些か荒い動作でシャツを脱ぎ、腰掛けていたソファの背に掛ける。
それを見つめ、深いため息を漏らす。
ここしばらく郁と会うのを控えていた。
そうしてようやく自分の中で有る程度の決着をつけてここに来た。

出てきた郁とすれ違うようにバスルームへと入り、シャワーを開き入ったように見せかけ、浴室のドアを微かに開き、室内の郁の様子を伺う。
案の定、少し戸惑う様子を見せていた郁が、堂上がワザと置いてきたシャツを抱きしめる。
その安心した表情に、今までの自分ならば何とも言えない腹立たしさで熱がこもっていた。
でも覚悟を決めてきた今は、堂上の心の中に冷えた塊が存在する。
しばらく堂上がドアに背を預け眺めていると、視線に気付いたのか、郁が驚いたようにこちらを振り返る。自分のしている行動が恥ずかしかったのか、いつものパニックを軽く起こしかけているのがわかるが、堂上が黙って見続けていると、いつもと違うとわかったのだろう、郁の方も徐々に大人しくなった。
その様子を見て、堂上は出していたシャワーと止め、郁の側へと近寄る。
戸惑う郁の視線に合わせるように屈み、見つめたまま言葉を綴る。
「郁、よく聞け 本当に好きな人が誰なのか、もう一度、考えてみろ」
「……え?」
驚く郁の表情からそんな事を言われると思っていなかったのが、伺えるが堂上はそのまま続ける。
「俺が居ても、その仕草をするのは、誰かにそうしてきたからだろ?」
「ち、ちがっ!」
言われた言葉に郁は、一瞬腕の中のシャツを見つめてから堂上に視線を戻す。
だが、視線の先の堂上が常とは違い表情がまるでない。そのため感情が読めなくて、郁は泣きそうになる。
「怒ってる訳じゃない。ただ、冷静に自分を見つめなおしてみたらどうだ?
好きと思わなかっただけで、お前が信頼していた人物や慕っていた人物がいたんじゃないか?」
恋心と自覚する前に『王子』様騒動が起こり、自覚しないだけで未だに慕っている人物が。
「間違ったままじゃ、お互いに不幸になるだけだ」
【間違い】と言う言葉を聴いた途端、泣きそうな表情で郁が顔を伏せた。
その表情を見つめ、堂上は郁に気付かれないように唇をかみ締める。
泣かしたくないのに俺は泣かす事しかできないのかもしれない。
郁から視線をずらし、立ち上がろうとした瞬間
堂上に衝撃が襲った。
バシーンッ!
一瞬何が起こったかわからなかったが、頬の痛みで郁に叩かれたのだとわかった。
驚きと共に郁を見つめると、怒りも露な表情をしているのにその頬には涙がとめどなく溢れていた。
そのままTシャツの襟首をつかまれ、引きずり下ろされる。





◆いかり

=間違い=
その言葉を聴いた瞬間、目の前が真っ赤になった気がした。
堂上教官が私の気持ちを疑うの?
確かに私は全てにおいて、自信なんてないし、本当に隣に並んでも良いかと不安になるけど、
そんな中でもたった一つだけ自信を持っている事があるのに!
【堂上篤が好き】だと言う、ただそれだけは揺ぎ無い私の中の真実なのに!
例え堂上本人にだってそれを疑う権利なんてない!

気がついた時には手を振り上げ、堂上を自分の視線に合わせ、怒鳴っていた。
「【堂上篤】以外の誰が私の中に入れると思うんですか?!そんな人がいたら私は故郷を捨てて今ここにいません!」
その言葉に堂上がはっとした表情をする。
母との確執も確かに事実ではあった。そしてそれ以上に故郷に心を置く場所もなかったから。
また、スプリンターとしての未来もあった。
監督をはじめ色々な人に言われたけれど、それさえも『憧れの王子様』の前ではどうでもよかった。

「どうしてわからないんですか?篤さん以外の誰が私を導けるって言うんですっ!」
昔から我が強かった自分は、監督の指導を受け入れているように見せかけて、自分が納得しなかったら受け入れてこなかった。
感覚派の自分らしく頭で理解するより身体が納得しないと受け入れられないのかもしれない。
それを理解していた今までの監督達は、怪我や故障をしないアドバイスはくれたが、基本は郁の好きにしてくれていた。だから本当の意味で指し示し、導いてくれた人なんていなかった。
あの時まで…。

図書隊への道を指し示してくれたあの時の三正。
怒鳴りながら、叱りながらも自分の進みたい道を真っ直ぐに導いてくれた鬼教官。
どちらも目の前の【堂上篤】なのに!
この人以外自分を捕らえた人なんていないのに!
「バカにしないでくださいっ!憧れだけで《恋》になる訳ないじゃないですか!」
いっぱい悩んだ!考えた!この自分が知恵熱を出す程いっぱいいっぱいにして出した答えを
当の人物が否定するなんて!なんて悲しい事なんだろう。
「私は目の前の堂上教官が好きなんです!その想いを否定しないでーっ!」

叫んだ瞬間、強く抱き締められた。
戦闘職種の自分が痛みを感じる程きつく、強く。







第三夜へつづく……


21:00 寄贈品

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