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風花 =Kazahana=

2008/05/27
おはようございます。


今日は季節外れで冬のお話です。

しかも、なんか暗い!長い!ので注意してください。

テーマはマリッジブルーだったんですが、路線から落ちて婚約解消危機になりました・・。

堂郁 婚約期間 年齢フリー 





夕食時間が終わった後の寮の食堂は寮住まいの者にとっての
コミュニケーションスペースと化している。

適当に集まって話しているだけだが、今日はいつもと少し雰囲気が違っていた。

柴崎と何気なく覗いて見たら、いつもは和やかな楽しい雰囲気に包まれいるはずの食堂は
静まり返っており、なにやら泣いている女子までいる。

ここは、どうしたものかとチラリと柴崎を見たところで
食堂の一団がこちらに気づいた。

「ああ、笠原に柴崎。お疲れ様」
「おつかれ様です・・・。どうかしたんですか?」

声をかけてきたのは1つ年上の図書館員の先輩。
そして良く見ると、その隣で泣いているのは同期のやはり図書館員である秋田三正だった。

座ったものか、どうしようか迷って柴崎と突っ立っていると、座ったら。と声をかけられ
とりあえず手近な椅子に座った。

「どうしたの?」と柴崎が、泣いている女子に声をかけると
代わりに、先ほど声をかけてきた先輩館員が答えた。

「秋田、今度結婚することになってたじゃない?」

そういわれて、ああそうだ。彼女は確か今度の春に結婚するはずだ。
自分も堂上にプロポーズされ、二人で恥ずかしいけど嬉しいねと話した事を思い出す。

「確か、外部の男性ですよね?」
「そうそう、そいつが突然結婚延期したいって言い出したみたいで」

とチラリと秋田を見る。

郁は柴崎と目を見合わせて固まった。

「なにか問題があったって事ですか?」と先輩館員に聞いてみると、秋田が口を開いた。
「解らないの。突然・・よそよそしくなったなって思ったら急に・・・・・」
「そんな。納得いかないじゃない」
「・・。どうして?って聞いたけど、今結婚する気がなくなったって」
「何それ!ひどい!」
「結局、その後気まずくて。別れることになったの」
「そんな!!式場だって探してたのに!?」

コクリと秋田は頷いた。

何人かいた、女子達は居た堪れないというように、元気だしな。とか男は他にもいるから。とか
今度いい男紹介するからとか。ありきたりな慰めをかけて食堂を後にした。

先輩館員も、もう少し話を聞いていてあげたいんだけど、今日はこれから
外せない用事があるから。明日部屋においでと秋田に言い残しその場を後にした。

残された、郁は怒りが収まらない様子で信じられない!と怒り沸騰だ。

「ごめんね。笠原にこんな話聞かせたくなかったのに」と秋田は涙目で笑った。

その笑顔は無理しているのが分かって、胸が痛んだ。

大好きな人に結婚しようって言われて、あんなに幸せそうで
それがいきなり、理由もはっきりしないままこんなことになったら。

「あたしだったら許せないよ・・」と気づいたら呟いていて柴崎に、ちょっと!と窘められた。
「そうだよね。私も・・許せない。でも、もう駄目だって分かっちゃったの」

堂上一正は大丈夫だよ。誠実な人柄だし。
笠原は幸せになって。と言って秋田は席を立った。

秋田を見送った後、私たちも今日は戻りましょと柴崎に声をかけられるまで
郁は動けなかった。



********************************************************************************

それから3日後の公休日

堂上と外で待ち合わせてデートをした。

主に、結婚式についての打ち合わせだったが
どうにも、堂上の様子がおかしい。

喫茶店で、話をしている最中も「ああ・・そうだな」とか「すまん、もう一回いいか」と
その繰り返しだった。


「堂上教官。どうかしたんですか?」
「・・いや。すまん。なんでもないんだ」
「なんでもないって・・心ここにあらずじゃないですか?」
「本当に、なんでもない。ちょっと考え事だ。すまん」
「そう・・ですか・・」


そういわれてしまうと、問い返せなくて、郁は黙った。


三日前に聞いたばかりの話が脳裏をよぎる。
もしかしてと思ったら怖くて聞けなかった。

本当は今日も前日外泊して今日打ち合わせしようと言っていたのが
突然一昨日、外泊はナシでもいいか?と聞かれた。

その時は急用かなにかかと思っていたが・・・。
今日、一日堂上は郁の方をまともに見る事がなかった。

夕食も一緒に食べることになっていたが、冗談で今日はもう帰りますか?と
言ったら、ああ。そうするか。とあっさりと返された。


帰りはいつも通り、基地まで手を繋いだが、その手がとても冷たく感じられた。



あまりに早い帰寮に驚いたのは柴崎だった。

「ちょっと、随分早いわね。ケンカでもしたの?」
「別に・・してないよ。なんか教官、今日は考え事したいみたい」
「ふーん・・・可愛い彼女との公休デートより考え事なんて穏やかじゃないわね」
とからかうと、いつもならうるさいなぁ!と怒り返してくるはずの郁から反応がない。

「今日ちょっと疲れたし、早めに寝るね」と郁は部屋着に着替えると
さっさとベッドに入ってしまった。

ちょっとまだ6時過ぎよ。と言ったが。

うん。とそれだけカーテンの向こうから聞こえた。


************************************************************************
結局、朝携帯を見たが堂上からのメールや着信は残っていなかった。

早く目が覚めて、いつもより早めに出勤すると堂上は既に出勤していた。

「おはようございます」
「ああ、おはよう」

とチラリとこっちを見ただけで、また書類に目を戻した。


いつもなら、今日早いなと声をかけてくれたり、昨日すまなかったなと
一言あったりするような場面だった。

何か言おうかと思ったが、ひんやりとして見えるその背中に
かける言葉が見つからず
郁もそのまま席に座り、今日のスケジュールの確認をした。




その日の昼休み、食堂で手塚に会った。

「おい、笠原」
「なに?」
「お前、堂上一正とケンカでもしたのか?」
「なんで?してないけど」

ならいいけど、と手塚は定食を口に運んだ。

「ケンカしてるみたいに見える?」と郁は内心ドキドキしながら尋ねると
「なんか・・こう余所余所しいって言うか・・気まずい雰囲気に見えたから」

郁はピタリと箸を止めた。

やはり自分の勘違いじゃない。

堂上は自分を避けてる?

ドキンドキンと心臓が早鐘の様に鳴り響く。

その様子に手塚が、オイ。どうした?と聞いてきたが
なんでもない。ちょっと急用と。食べかけのトレイをもって郁はその場を後にした。



午後の館内業務は最悪だった。

今更というミスを連発し、小牧にどうしたの?と少し困ったように聞かれた。

堂上も、いつもなら何をやってる!と怒鳴る所のはずが

もっとしっかりしろ。
とそっけなく言われて、郁は自分の嫌な予感が確信に変わって行く気配を感じた。


業務後、日報を提出し郁は足早に事務室を後にした。

堂上は、お疲れ様と。声をかけるだけで、チラリとこちらを見る事もなかった。


**************************************************************************
その夜、メールで堂上から呼び出しがあったが、郁は断った。

今夜、もしも言われてしまったら勤務に差し支える。
疑っているだけでこんなにもまともに業務ができないのに。

予感が的中してしまったら・・・。考えるのも怖い。

せめて・・公休の前の日でなければ自分は受け止め切れない・・・。

万が一の時って2・3日有給とかとってもいいのかなぁと郁は部屋で膝を抱えて泣いた。
柴崎が今日、外出でよかった。思い切り泣いて、泣きつかれて眠った。



その翌日からも、堂上の勤務中の様子は変わらなかった。

郁ももう何も言わなかった。

夜の呼び出しは時折あったけれど、怖くて、断り続けた。

一度電話があり、どうかしたのか?と聞かれなんでもないですと告げた。

何でもなくはないが、何でもないと言わないと何かが起こりそうで怖くていえなかった。


明後日の公休にはまた打ち合わせがある。
あんなに楽しみにしていた公休なのに、今はその日が来るのが怖い。

いっそ断ろうかと思ったが、いつまでそうしていても何もかわらない事も解っている。


もう、堂上と抱き合ったり、キスしたり、肌を重ねたりすることはないのかもしれない。
そう思うと、とても悲しくて寒かった。



**********************************************************************

堂上は、また断りのメールが届いた携帯を見てため息をついた。

丁度、ノックの音がして小牧が顔を出す。

「お疲れ。ちょっといい?」
「ああ。いいぞ」

持参のビールをテーブルに置くと早速二本開けて一本を堂上に渡した。

「ねえ。堂上。笠原さんと何かあったの?」
「いや?何もないが?」
「そう?変だよ。仕事中もあれだけ余所余所しいと・・笠原さん全然笑わないじゃない。
 前は、いつでも良く笑って元気だったのに」

そういえば、最近、郁が笑っているのを見ていない事に気づいた。

先日、結婚する事を隊長に報告した。

当然特殊部隊内では初めての部内結婚になる。

周りへの影響というのもあるから、結婚すると今まで通りいかない事も出てくるし
それだけ配慮をする必要が出ることもあるが適当に仲良くやれと言われた。


改めて考えれば、確かに付き合っているのと結婚では立場がかなり異なる。
仮にも身内になる者に対して、甘くすることはできない。

今までも多少の贔屓があったのは自他共に認めざるを得ない。

だがこれからは、そういった面での配慮も必要になるのだ。

今までは同じ班であったが、これを期に班編成の見直し等も必要になるかもしれない。

もちろん新人が入れば編成が大きく変わることもある。
郁もそろそろ自分の下から離れても良い頃合だ。


そんな事を考えていて、前回の公休デートでは頭が一杯で郁の気持ちに気を配ってやれなかった。
ただ、そういった事情もあって仕事の時は出来る限り、公私混同がないよう
そっけなくする様心がけていた。

その事を話そうと何度か誘いをかけたが全て断られている。

自分がそっけなくしていることを怒っているのだろうか・・・・。


そういった経緯があったことを手短に小牧に説明すると
小牧は、また悪い癖だねと呆れたようにビールを呷った。

「どういう意味だ?」
「また、勝手に一人で考え込んで実行しちゃって。笠原さんに言ってないんでしょ?」
「言おうと思ったが、出てこない」
「ほら。きっと向こう変な方向に走ってるんじゃないの?」

と改めて指摘されて、眉間に皺が寄る。

電話した時のなんでもないです。はおかしくなかったか?
事務室でそっけなくしても、郁は何も聞いてこない。

どうしたのか?と気になりはしないのだろうか。
そっけない自分に郁もそっけなく返してきていた。


「今、お前と笠原さん、結婚前の微妙な時期だろ?それを何の説明もせずに
 あんな態度とってたら相手はどう思うと思ってるの」あの笠原さんだよと小牧はビールを呷った。


「・・あいつ。何か変な誤解をしてるってことか?」
「まあ、あり得なくないよね?」
「例えば・・結婚を取りやめる・・とか?」
「さあ、それは俺はわからないけど。ちゃんと意向擦り合わせておかないと取り返しつかなくなるよ」

と小牧にフォローされた。


時計は既に11時少し前。もう門限ギリギリだ。

明日、郁を捕まえてちゃんと話せば、大丈夫。

そう思った。


****************************************************************************

翌日、郁は出勤しなかった。

急用でお休みさせて下さい。と小牧に連絡があったらしい。
いつもなら班長である堂上に連絡が入る。

小牧は、ほらね。といわんばかりに堂上の肩を叩いた。


明日は約束をしてある。式の打ち合わせだ。

何も言っていなかったから郁は戻ってくる。
今日は本当に用事があっただけだ。

そう思っているのに、仕事が手に付かない。
そんなはずないのに
このまま、いなくなったら?そう思うといてもたってもいられない。

一度休憩時にメールを入れたが返信がない。
電話をかけても留守番電話になっている。


いつの間にか厳しい表情になっていたようで、昼休み小牧に窘められた。

「堂上、いい加減にしろ。仕事、手に付かないなら早退してくれた方がましだよ。
 手塚の顔みた?部下にあんまり心配かけるな」
「すまん・・・。大丈夫だ」
「全然大丈夫じゃないでしょ。具合が悪いなら早退しろ」

俺は別に具合は悪くないと言いかけて、その真意を悟った。

「しかし・・」
「後半日くらい俺と手塚で問題ない。館内巡回は他班から二人借りるし」
「・・・・」
「今後ちゃんと管理してくれればそれでいいよ。今無理したら取り返しがつかなくなるかもよ」


小牧は言葉を選んで、堂上の背中を押した。

本来なら、そんな事は業後まで忘れておけといいたい所だが
これが本人達にとってどれだけ重要な事か解っていたので
あえて、行くように勧めた。

もちろん、どこにいるかなんて知らないので見つけられるかも解らないが。

「すまん。明後日にはちゃんと直してくる」


と堂上は早退の届けを出して、事務室を出ていった。



まったくどこまで不器用な二人だ。やっとここまで来たと思ったのに
まだ何かしら起こるから不思議だよ。

小牧はため息をつきながら、元気のない部下がどこに消えたのか思いを巡らせた。


*************************************************************

堂上は、早退の届けを出すとすぐに業務部の柴崎の元へ向かった。

柴崎は堂上の姿を見るなり、何かを悟ったようで
業務を他の館員に頼んで、出てきてくれた。

「今日、笠原が休みをだしている。知ってるか?」
「はい。どこか行くみたいで支度してましたから」
「どこに行くか聞いたか?」
「いえ?ただ、ちょっとその辺行ってきますって感じじゃなかったですよ」
「どういう意味だ?荷物が多かったとか?」
「いえ、なんていうか重装備でしたね。寒い所に行くって感じ」
「寒い所?」
「そう。厚手のセーターとかマフラーとか、普段薄着のあの子にしては珍しい感じ」


その言葉に堂上は首をひねった。

寒い所。今は2月で確かにどこでも寒いが、そこまで重装備が必要な寒さではない。

「しかもすごく早い時間に出て行きました。そういえば・・前日チラっとネットしてるのが見えたけど
 電車調べてたみたいですよ。奥多摩?だったような・・・」

その言葉で、堂上は前に郁と話していた話題を思い出した。


 

デートで喫茶店に入っていた時

「堂上教官。風花って知ってますか?」
「カザハナ?なんだ?花の名前か?」
「違いますよ。雪です。この間読んだ本に書いてあったんです。
 冬から春に向かって山に積もった雪が風で舞い上がるんです、花みたいに。
 青く晴れた空に雪が花びらみたいに舞って、儚くて、一瞬の夢みたいなんだって」

一度、みたいですね。
東京でも見れますかね?と笑っていた。

今度一緒に奥多摩にでも行ってみるか?と言ったら嬉しそうに笑っていた。




「柴崎、すまん!助かった。ちょっと行って来る」と言うと堂上は急いで出て行った。


「全く。なんていうか世話が焼ける二人だわねぇ。小牧教官もたーいへん」

最近、郁の様子がおかしかった事は気づいていた。
堂上と上手く行っていないのは解っていたが、何も言わなかったので聞かなかった。

あの様子なら、今日仲直りして明日には帰ってくるだろう。

柴崎はさって仕事するかー!と業務に戻った。


*******************************************************************

厚着をしてきたとはいえ、やはり寒い。

ハイキングコースをゆっくりと登っていく。

風はそんなに吹いてない。

先日降った雪が山頂の方には積もってるという。
もしかしたら、上ったら見られるかもしれない。

ハイキングコースの足場は問題なかった。
駅近くの売店で色々聞いたら、少し上った所に広場があって休めるから
そこならタイミングが良ければ見られるかもしれない。と言われた。



いつか、堂上と二人で来ようと約束した。

すごくすごく嬉しかった。

結婚式でするフラワーシャワーみたいに綺麗なのかなと思い楽しみだった。



明日、堂上とちゃんと話をしよう。
それが最後のデートだとしても、堂上がくれたものの大きさを考えると
この間、秋田に言ったみたいに、許せない!なんていえない。

ありがとうって笑っていいたい。
仕方ない事だって世の中にはある。

堂上は誠実だから、それゆえに曲げられない信念がある。
もしかしたら、自分の何かがそれに添わないのかも知れない。


今日もしも見れたら、ちゃんと目をみてありがとうと言えそうな気がして
急に休みを取ってしまった。

入隊してからこんな私用で急に休みを入れたのは初めてだった。

最初で最後。

そう思って、小牧に連絡をした。堂上にするべきであるのはわかっていたが
どうしたと問われたら、嘘をつくのは嫌だったから。


早めに出たのに、色々確認したりしていたら結局上るのが遅くなってしまった。

のんびり、のんびりハイキングコースを登りながら

図書隊に入ってから今までの日々を思い返す。


王子様にあこがれて入った図書隊。
タスクフォースに抜擢されて驚いて。

厳しい上官に反抗しまくって、仕事の覚えも悪くて同僚とは上手くいかなくて
親にも反対されて。

でも、いろんな事が少しずつ少しずついい方に動いた。

いい人達にめぐり合えて、素晴らしい仕事に就けた。

これからも、図書を守って行きたい。

自分にできる精一杯の力で。

今の自分がここにあるのは全て堂上がいてくれたからだ。

どんなにバカでダメでも見捨てずに導いてくれて
恋人としても今、自分を導いてくれている。

矛盾の中で戦う厳しさと意味を教えてくれた人。

初めて、愛し合う幸せを教えてくれた人。

尊敬できる大事な人。

これから、ずっと一緒に図書を守りたい。

そう思った。
そう思ってくれて嬉しかった。



せめて、すまないと謝る瞳に少しでも本音が見えたらいいな。


そう思っているうちに、少し開けた場所についた。

今日は本当にいい天気だ。

郁は石のベンチにハンカチを置くとその上に座った。

ここで待ってみよう。と少し目を閉じた。


************************************************************************

風が段々と強くなってきた。

しかし、雪が舞う気配はない。

やっぱり、今日は無理だったかなと思い立ち上がる。

随分と長い時間座っていたので身体が冷え切ってしまった。

持ってきた温かいお茶でも、もう身体が温まらない。

これ以上いれば、身体が動かなくなって危険だ。

残念だが、またの機会にしよう。そう思って荷物をバッグに詰め直す。


ふと、足音が聞こえて、手を止めた。

ザッザッっとしっかりと大地を踏みしめる様な足音に思わず振り返る。


見知った顔に、郁が驚愕する。

「堂上・・教官?」

名前を呼べと散々言われているのに油断するとウッカリ呼び方が戻ってしまう。
はっとして言い直そうとしたが、もうこれからはずっと堂上教官なんだと思いなおし。
言い直さなかった。

「まだいたか。良かった」 その額には汗が浮かんでいる。相当急いで登ってきた事が伺えた。
「何してるんですか?こんな所で。仕事は?」
「アホ!それはこっちのセリフだ。仕事休んで何やってる!」
「・・・ちゃんとお休み連絡しました」
「急用だそうだな。これが急用なのか?」

そういわれて、カチンと来た。
郁は思わず怒鳴ってしまった。

「別に関係ないじゃないですか!そりゃ、堂上教官じゃなく小牧教官に連絡したのは
 よくなかったかもしれませんが、有給です!一日くらいいいじゃないですか!」

涙が出そうだった。しかし、ここは泣く所じゃない。
郁はキッっと堂上を睨んだ。

堂上は無愛想な顔をして、郁をじっと見ている。
そして、手を伸ばすと、郁の頬にそっと触れた。

「冷たいな。何時間いたんだ。こんな何もない所に」
「・・・・別にいいじゃないですか。何時間いても」
「風邪・・ひくぞ」
「明日休みだから風邪引いても別にいいです。明後日はちゃんと行きます」
「明日は式の打ち合わせだろうが・・俺一人で決めていいのか」

その言葉に郁は弾かれた様に堂上の瞳を見つめた。
一つの陰りも見逃したくなかった。


「式の打ち合わせはもう、必要ないんじゃないですか?」

その言葉に堂上は驚いたように目を丸くする。
「どういう・・意味だ?」
「そのままですけど。結婚やめにしたいんですよね?」
「誰がそんな事言った?」
「だって、教官おかしいですよ。仕事でもあんなに余所余所しくあたしを避けて。
 この間の打ち合わせも心あらず」
「それは事情があったからで・・」
「だから、事情はコレじゃないんですか?明日、あたしちゃんとさよなら言うつもりで
 今日はここに来たんです」

堂上が郁の腕をグっと強く掴んだ。

「さよならって。結婚しないという事か?」
「そういう・・事ですよね。だって、堂上教官が望まない結婚なんてしても意味ないですから」

郁はもうダメだと思った。
自分で言った事なのに涙がこぼれた。

涙は卑怯だ。
笑って言いたかったのに。
なんでこんな事すら自分の意思の通りにならないのか。

「違う!お前はまた解ってない!」
「解ってます!」
「俺が結婚を取りやめにしたいなんて、結論にどうやれば辿り着く!」
「どう考えても辿り着きます!」
「バカが!ちゃんと人の話を聞け!」

そういわれて、郁は立ち尽くす。

堂上は、どうして仕事中によそよそしくしていたのか
前回のデートで上の空だったのはどうしてなのか、ありのままを話した。

郁は俯きながら、ただ黙って聞いていた。

そして、全て聞き終わってから、涙目で怒鳴った。

「それなら!なんでちゃんと言ってくれないんですか!?」
「言おうと思ってたら、お前が話す機会を断るから」
「あたしのせいですか?!」
「そうは言ってない!」
「隊長に報告だって、あたし・・一緒にいきたかったです」

そういわれて、堂上はハっとした。

「すまん・・また俺の悪い癖だな」

郁はその言葉に首を傾げた。

「小牧に言われた。何でも一人で勝手に決めて、勝手に行動するって
 相手がどう思ってるかを時々置き去りにしてるってな」

「・・ほんとですよ。あたしと教官の事なのに何も言わないで勝手に・・ひどいです」

堂上は郁の腕を引いて、抱きしめた。

「こんな俺じゃ・・駄目か?結婚・・やめたいか?」
「・・やめたいわけないじゃないですか・・。あたしがどんな気持ちでここにきたか
 教官に解りますか?」
「すまん・・」
「教官に笑ってさよなら言う為の勇気が欲しくて、冷たいベンチにずっと座って・・」
「・・・・。郁、頼むからもうさよならって言葉を使わないでくれ」

堂上の抱きしめる腕がきつくなる。

郁は握り締めていた、掌を解き、そっと堂上の背に回した。




強い強い風が吹いた。

冷たい風に雪が舞い上がる。


舞い上がった雪がふわふわと降りてくる。


「これ!これですよ!きっと」郁が嬉しそうに堂上から離れる。


青い澄んだ空から舞い降りてくる白い雪の花


両手を広げて空を見上げる郁の姿


「ああ、綺麗だな・・」


堂上は素直にそう呟いた。





いつか一緒に見たいですね


そう笑った郁が今、目の前で嬉しそうに微笑んでいる。
もう一度笑った顔が見れて良かったと心から思った。


結婚式のフラワーシャワーは白一色にするか?と問うと
カミツレの花なんてどうですか?と笑った。



堂上が郁の名を呼ぶ。

振り返った、郁に一度しか言わないから良く聞けと言うと

郁が首をかしげてハイと答えた。

「俺は、お前を愛してる。一生だ。絶対に変わらないと誓う。
 これからも、お前を不安にさせる事があるかもしれないが
 そういう時は、ちゃんと言ってくれ」

郁は驚いた様にじっと堂上を見つめてから花が綻ぶように笑った。

「これからは勝手に一人で決めて、一人で突っ走らないで下さいね?
 それってあたしの専売特許ですから」
「いつ、お前のになったんだ」


二人で目を見合わせて笑う。

郁は寒さで赤くなった頬で微笑むと
「大好きです。篤さん」と堂上の名を呼んだ。






以上、長いですね!

えっと、場所柄とか季節柄とか超無視してますのでリアリティはなしで。
半分以上普通に空想です。

マリッジブルー的な話にしたかったのに路線ズレしました。


堂上教官て、捨てて来たといいながら、結構一人で突っ走っていきそうですよね。
仕事とプライベートはまた別なのかな?(笑)

そしてなぜかウチの脳内郁ちゃんはすぐダーク方面にダッシュしていきます。
こんなんですみません。

多分本物の二人だったら仕事ほったらかして
脱走したりしないと思います。あくまで空想って事でスルーしておいて下さい。

たまには外に出したくて・・・(苦笑)


次はラブラブ甘甘行きたいと思います。m(__)m


07:25 図書館SS(堂郁)

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