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も・し・も =エピソード3=

2008/05/21
おはようございます。

本日は、もしもシリーズです。

ポチ様からのリクエストが参考になっています。


エピソード3:もしも、王子様の正体を知らないまま、二人が付き合い始めていたら です。


まあ、別に支障はないですよね(笑)





郁は何度か大きく深呼吸した。
体中がガチガチに固まっている。
何度も声を出そうとしては、声が出る前に声が震えるのが分かってストップをかけた。

「好きです」

「あたし、堂上教官が好きです。あたしがそんな事いったら今更ですか?」


----------------------------------------------

絶対振られる。

そう思った。

でも、答えはあたしが思っていたどれとも違っていた。

抱き寄せられてキスされた。

わかったかと聞かれて、頷いた。


教官・・・・

それって教官もあたしを好きって思ってくれてるってことですよね?


------------------------------------------------

もう少しで本日の業務も終了という時刻。

自席で今日の日報を書き上げていたら、隊長の玄田から声がかかった。

「おい、笠原」

「はい。なんでしょうか?」

郁は立ち上がり、玄田の前へと進み出た。

「広報からお前に依頼がきとる」と一枚の用紙を渡される。
「広報から・・ですか?」
「なんでも、広報が作る案内紙に今度から、図書館員や防衛員のコメント載せるんだと。
 で、第一回目はぜひお前からコメントをもらいたいとの事だ」
「ええええ~~~っ?!」

郁の絶叫に、堂上から怒声が飛ぶ

「笠原!うるさい!」

郁は、反射で肩をすくめチラリと堂上を見た。


付き合い始めてもう半年にはなる。
プライベートの時は信じられないくらい優しい彼氏だけど
仕事中は前よりも厳しくなった。
公私混同しない。と厳しく律しているのが堂上らしい。

郁はすみません。と呟き、玄田を見た。

「コメントするかしないかは自由だ。お前の好きにしろ。」
「してもしなくてもいいんですか?」
「義務じゃないからな。まあ、特段なにも問題なければ受けてやれ」
「それは・・構わないんですが、なんであたしなんでしょう?」

「そりゃ、お前、初の女性タスクフォース配属で志望動機もちょっと
 他に類を見ないインパクトだからな。もってこいだろう」

というと玄田は豪快に笑った。

「そんなもんですかね・・・」と郁は首を傾げた。
「で?どうする?」
「あ、別に問題ないんで受けてもいいです」
「そうか。じゃあ広報には俺から返事入れとく。後は直接連絡があると思うから適当にしろ」
「わかりました」
「以上だ」

そういわれて、郁は敬礼すると自席へと戻った。

すると、堂上が振り向きジロリと郁を見た。
「お前、あんまり広報にアホな事しゃべるなよ」

そういわれて、郁が怪訝な顔をする。

「アホな事ってなんですか?!」
「ホラ、あれだ。王子様。もう少しオブラートに包んで喋れ」
「なっ!王子様のどこがアホですか!」
「アホじゃなけりゃバカだ!広報に王子様にあこがれて!なんて書かれたらいい笑いモンだ!」

郁はガタンと思い切り立ち上がった。

「ちょ!いくら堂上教官でも言っていい事と悪いことがあります!」
「アホだからアホだって言ってるんだ。その後、会えてもいない王子様なんて空想生物をキラキラしく語るな」
「空想生物って!王子様は実在してます!見つかってないだけです!」

郁は力任せに書きあがった日報を堂上のデスクに叩きつけて
お疲れさまでした!とドカドカと事務室を出て行った。


堂上の向かいでは小牧が困り顔で笑ってる。

「堂上。言いすぎ」
「うるさい」
「気持ちは分からなくはないけど、笠原さんには伝わらないよ」
「わかってる。ほっとけ」

ハイハイと小牧は自分の作業へと戻った。

堂上は郁の叩きつけていった日報を開き、判を押した。



***********************************************************************

翌日から、郁は堂上とプライベートでは一切口をきかなくなった。
仕事に支障は出ていないが、既に手塚と小牧からやりにくいから
さっさと何とかしろと苦情が出ている。


しかし、堂上としても王子様云々話には限界が来ていたので
おいそれと謝って矛を収める訳には行かない。

さすがに四日目となった昼食時、いい加減痺れを切らした小牧から
どうなってるのと聞かれた。


「まだ、冷戦中だ」
「前も言ったけど、気持ちは分からないでもないけどちょっと大人気ないんじゃない?」
「ほっとけ」
「ほっとけるならほっとくよ。プライベートな事だしね。
 ただ、一緒に仕事している方の身にもなってよ、ピリピリしちゃって手塚なんて
 元々寡黙なのが、地雷踏まないようによりいっそう寡黙になってるの解らない?」

小牧の鋭い視線に、堂上は逃げるように視線を外した。

「別に笠原さんの王子様発言は今に始まったことじゃないだろ。何いきり立ってんの」
「あのなぁ。お前はそういうが、事有るごとに王子様王子様って言われる
 俺の気持ちがわかるか?」
「だから、それは最初からそうでしょ」
「前はまだいい、ただの上官と部下だったからな。今は仮にも付き合ってるんだぞ?
 それを、あいつは憧れの人は王子様! 気にせずにいられるか?」
「そりゃ、王子様の正体が解らなきゃ気になるだろうけど
 どっちもお前だろ、過去か今かの違いしかない」

小牧は呆れたようにため息をつく。
堂上は、それが問題なんだよ!と捲し立てた。

「正体不明なら別にどうでもいいんだ。問題は過去の自分だってことだろ」
「自分になら別に嫉妬する事もないんじゃない?」
「お前な、事有るごとに過去の俺の方が素晴らしいみたいにいわれたらどうだ?
 それも、部下兼恋人に!」
「うーん。まあ心中複雑ではあるよね。特に堂上の場合?」


そう、あの時自分はこのままの自分ではいけないと
たくさんの痛みと引き換えに今の自分を手に入れたのだ。

そして少しはまともになったと思っていたのに、それを事あるごとに
あろうことか、郁に過去のほうがよかったと指摘されて冷静でいられるはずがない。

しかも、郁の語る【王子様】像は明らかに自分ではない人物だ。


「もうさぁ。つきあってるんだし言っちゃえばいいんじゃない?」
「アホッ。言えるわけあるか!」
「なんで。別に構わないでしょ」
「構う!あんなにキラキラしい王子様像を語られた後に、あ、それ俺だ。なんて
 どんだけマヌケだ!」
「アハハハハハハ。確かにねぇ。あの笠原さんの語りの後じゃ、正体明かしにくいよね」
「あいつだって、ショック受けるに決まってるだろ」


それはそんなことないと思うけどといいながら小牧は思う存分笑った。



************************************************************************

突然、郁の態度が軟化したのはその翌日だった。

流石にまだ王子様発言での決着が付いていないので、プライベートな会話はなかったが
業務中の雰囲気は大分ましになった。

その理由は、その夜、小牧経由で知った。




「王子様、一緒にさがしてくれるっていう人がいるみたいだよ?」

缶ビールをぶら下げて、堂上の部屋にやってきた小牧が開口一番そういった。

堂上は飲みかけていたビールを思い切り吹いた。
「なっ!」
「ちょっと汚いな。落ち着いてよ」
「どういうことだ!?」
「笠原さんに聞いたんだけど、この間広報の取材終わった後に声かけられたんだって。
 たしか防衛部の斉藤二正っていったかな?」
「しらんな。王子探しとどう繋がるんだ?」
「取材ってフリーなスペースでやってたから、斉藤二正にも聞こえたらしくて
 終わったあとに、一緒に探してあげようか?って言われたらしいよ」

堂上は険しい顔つきで、一口ビールを飲んだ。

「で?あいつは?」
「喜んでたよ。自分ひとりじゃ限界があるけど、ニ正ならその頃既に図書隊にいたしね。
 王子様見つかるかもしれません!て。」

堂上は厳しい顔つきのまま、無言でビールを煽った。

「で?どうするの?正体明かす?無理やり止める?」
「・・・・ほっとけ」
「寛大だね。まあ、ほっといてもいいならいいけど。注意してみててあげた方がいいかもよ」


と明らかに小牧は自分ではなく、郁に対して注意してやったほうが良いといった。

「どういうことだ?」
「んー。俺も聞きかじりだけど、斉藤二正って結構ハデみたいだよ。女性関係」

その言葉に、堂上の顔つきが変わる。

「まあ、今回は本気でボランティアかもしれないし、解らないけどね」と小牧は肩をすくめた。


とりあえず、様子を見ると。堂上は険しい顔つきのままビールを飲みこんだ。

ほんと素直じゃないねぇと小牧は苦笑した。



******************************************************************************

その日を境に、郁はウキウキと昼食に出たり
帰りにどこかに寄っているような様子が見られるようになった。


相変わらず自分とはプライベートな会話をしない。
先輩隊員からはお前ら別れたのかと口々に聞かれる。

そのたびに別れてません!と否定しているが、そう思われても仕方ない状況が発生している。

自分とは口をきかない郁がいそいそと他の男との会談に出かけているのだ。
自分と別れて、その男とくっついたと思われても不思議じゃない。

郁はただ、王子様の手がかりを得たいだけだというのは充分に理解している。
それでも、自分以外の男と楽しげに会話する姿に腸が煮える程の怒りを覚えてしまう。

すぐにでも、首根っこを捕まえて、いい加減にしろ!と怒鳴りたいが
今郁を止めれば王子様探しの邪魔をしたことになり、余計に怒りや不信を煽ってしまう危険もある。
できれば、これ以上揉めるのは遠慮したい。

しかし、自分が王子様であるなどと口が裂けても言えない。

小牧に呆れられながらも、がんじがらめの状態で静観を決め込んむしかない。


**********************************************************************

「ちょっと、笠原。あんた堂上教官と別れたってほんとなの?」
「ええ!?なんで?別れてないよ!!」

柴崎の問いに郁は心底驚いたような顔をした。

「あんた、最近防衛部の二正とまめまめしく密会してるらしいじゃない。」
「それは!王子様探し手伝ってくれるっていうから、色々調べる方法とか教えてもらってるだけで」
「はぁ?王子探し?」
「そうよ!教官とは王子様の事でちょっとケンカしちゃって・・気まずくなってるだけ」
「それにしたってあんた。ケンカ中によその男とイチャイチャしてたら
 堂上教官相当キテるんじゃないの?」

「・・・だって。教官、王子様の話するとすごく怒るんだもん」
「そりゃ、自分よりその王子様が素敵みたいに言われたら腹もたつんじゃないの?」
「あたしはただ、お礼が言いたいって。それだけなのに?」
「あんたはそうでも、教官にその気持ちを解れってのは難しいんじゃないの?」

まあ、あんた達の事だから好きにしたらいいけど。と柴崎は呆れたように
雑誌に視線を戻した。


王子様が見つかったら、お礼を言って教官にもちゃんと謝って
それで全部終わりに出来たらいいのにって思ったんだけど・・な。

堂上教官・・・怒ってるのかなぁ・・・・・・・・。


郁はならなくなった携帯を見つめながらそっとため息をついた。

**********************************************************************

小牧の懸念が現実のものになったのはそれから1週間後の事だった。


堂上の部屋で手塚と小牧と三人で酒を飲んでいるところに
手塚宛に柴崎から電話が入った。

すみませんといいながら、手塚が電話に出る。

「もしもし」
「もしもし手塚?」
「どうした?」
「この間のビデオ、見終わったから続き貸して欲しいんだけど」
「ああ、もう見たのか。解った。じゃあロビーに持ってく」
「今、何してんの?」
「堂上ニ正の部屋で飲んでる」

その言葉に、柴崎が急に黙り込んだ。
そして低い声で、再度確認をされる。

「堂上教官の部屋で飲んでるの?堂上教官部屋にいるって事?」
「あたりまえだろ、本人いないのに他人の部屋で飲むか?普通」

そう答えると、柴崎が焦ったように堂上に電話を替わる様せかした。
手塚は訳がわからず、とりあえず堂上に電話を渡す。

「なんだ?柴崎だろ?」
「よく解らないんですが堂上二正にすぐ替われといっているので」

堂上は首をかしげたまま、手塚の電話を受け取った。

「もしもし。堂上だが」
「堂上教官!今日笠原と一緒じゃないんですか?!」
「何だ?まだケンカ中だ」
「あの子、1時間くらい前に教官と待ち合わせだって出かけましたよ」
「なんだそりゃ。約束してないぞ」
「しかも、外泊だしてます。嘘ついておかしいじゃないですか。
 最近あの子王子様探しとかで付き合ってる二正の所に行ったんじゃないですか?」

そう指摘されて、小牧に言われた言葉を思い出した。

「郁はなんて言って出た?」
「出かける様子だったから、からかって堂上教官と仲直りかって聞いたら
 ちょっとヘンな顔して、うんそうって。今日少し遅くなるかもって」
「どこに行くとかは?」
「言ってません。てっきり仲直り前で気まずいからだと思ったんですが」
「解った。探しに行く」
「ちょっと待ってください。あの二正って調べてたら結構くどきポイント決まってるんです。
 私も一緒に行くからロビーで」
「解った。すまんが頼む」

電話を切ってすぐに出かける支度をした。

「どうしたの?堂上。何があったの?」
「郁があいつに呼び出されて、ノコノコ出かけやがった」
「斉藤二正?」
「恐らく。柴崎には俺と出かけると言って出たらしい」

その言葉に、小牧も立ち上がり、人手は多い方がいいでしょ。といった。
手塚は状況が飲み込めないが、とにかくすぐに笠原を探す必要がある。と判断し
同行を申し出た。

**********************************************************************

店内は程ほどに混んでおり、ザワザワと騒がしい。

「笠原さん。ほらもっと飲んで」
「あ、あたしお酒弱いんで」と遠慮すると、もう少しくらい大丈夫でしょと注がれた。

「あのー。それで王子様の事、解ったかもしれないっていうのは?」
「うん。そうなんだ。それは最後のお楽しみ。ほら、今日奢りだしもっと飲みな」

斉藤はニコリと人懐こい笑みで郁に酒を勧めた。
郁は曖昧に笑いながら、本当にもうと辞退したがこれ飲んでくれないと
教えてあげられないなぁ。と冗談めかして言われ
仕方なく注がれた酒を飲み干した。


*************************************************************

柴崎とロビーで落ち合い、郁のいそうな場所を確認する。
柴崎の集めた情報で有る程度ポイントが絞れたので、そこへ向かう。

何度も郁の携帯を鳴らしているが、コール音がなるだけで応答がない。

「あの子、酒弱いから、店から連れ出されるのが早いかもしれません。
 公園の方とホテル街の方もいちお、張って置いたほうがいいかも」

柴崎の言葉で、手塚と小牧がそれぞれ、二手に分かれた

「多分、店はあそこだと思います」と柴崎の先導でめぼしをつけている店へと走った。


******************************************************************


「笠原さん?大丈夫?」
「・・はい」
「なんか、大分酔わせちゃったね。ちょっと店でて風にでもあたろうか?」

そういわれて、郁はコクリと頷いた。

王子様の事聞きたくてなんか飲みすぎたかも・・・
足元がフラフラする。

お金を払うと申し出たが、いいからいいからと断られた。

斉藤に肩を抱かれ、慌てて離れる。

大丈夫です。と言うと斉藤は困ったように笑った。

こっちだよと誘導されて、大きな公園に着いた。

ちょっと座ろうかと、ベンチに誘われた。


「ところで・・・。王子様・・そろそろ聞いてもいいですか?」
「ああ。そういえば、まだ言ってなかったね」
「誰かわかったんですか?」
「大体ね」
「所属と名前教えてもらえますか?」
「今日の終わりに教えてあげるよ」

その言葉に郁は首を傾げた。

「今日の終わりって、これで帰るんじゃないんですか?」
「冗談だろ?」
「え?だって、ゴハン付き合ったら教えてくれるって」
「僕は、今夜付き合ってくれたらって言ったはずだよ」
「それって晩ご飯にって事じゃないんですか?」

郁が不思議そうに斉藤を見つめた。
斉藤は、怪訝な顔をした後に思い切り噴出した。

「いやぁ。噂どおりだね。笠原さん」
「どういう意味ですか?」
「堂上ニ正のお姫様で、仕事はオトコマエ。色恋ごとはオトメ回路」
「なっ。誰がそんな」
「有名な噂だけどね」

そういって斉藤は郁をぐいっと抱き寄せる。

「普通、いい年した男が今夜付き合ってくれっていったら 晩ご飯じゃないでしょ」
「やっ、あたし。彼氏いるんで。そういうつもりじゃ!」

郁は慌てて斉藤から離れようとするが、酔いが回っていて上手く力が入らない。

「彼氏って堂上ニ正でしょ?知ってるよ。黙っていれば解らないよ。僕も言わないしね」
「や!そういうコトじゃなくて」
「王子様。誰か知りたいんじゃなかったの?」
「それは・・そうですけど、こういう事だったらお断りします!」
「今更それはないよ。もう調べはついちゃってるんだし。それなりの報酬はもらわないと」
「ほ・・・報酬って!!」

郁は必死にその腕から逃れようと暴れた。

「別に彼氏と別れろって言ってるんじゃないよ。今夜僕に付き合えばいいだけ。
 一晩だけだよ。後から脅したりしないって。そういうのは趣味じゃないからね」


相手も防衛員だけあって相当鍛えている。
酒が回っていなければ、自分でも充分太刀打ちできるはずなのに力が入らない。

堂上が怒るのも当たり前だ。王子様に夢中になって
こんな男に連れ出されて・・・・・。

郁の瞳から悔し涙が零れる。

「泣かないでよ。別にひどい事しようって訳じゃないんだからさ」
「好きでもない人とそんなこと。したいと思えない」
「聞きしに勝る乙女っぷりだね。新鮮だな」
「離して下さい」
「大人しく、ホテルについてきてくれるなら離すよ」

ニコリと笑った笑顔は先ほどと全く変わらない、爽やかで優しい笑顔だ。
こんな笑顔で笑う人がこんなことするなんて信じられない。


郁の押し返す腕などまるで気にせずに顔を近づけてくる。
必死で顔を逸らした。

「やめて下さい!」



その声に被るように郁!と自分を呼ぶ声が聞こえた。

ピクリと斉藤が反応し、ゆっくりと振り返る。


全速力で走ってきたのか、堂上の息は切れていた。
訓練で鍛えている堂上の息は簡単には上がらない。
どれだけの距離を探し、ここまで走ってきたのか
その呼吸が全て物語っていた。


「あーあ。見つかっちゃったね」と斉藤が立ち上がる。
「貴様!郁になにした!」
「こっちもまた聞きしに勝る番犬ぷりだね。別に僕が無理強いしたみたいに言わないでよ」
「無理強いしてるだろうが!」
「人聞きが悪いな。笠原さんの王子様探しを手伝ってあげた報酬に
 一晩付き合ってってお願いしただけだよ」
「上手いこと言って騙したんだろうが!」
「だから、僕は一晩付き合ってって言った。笠原さんがそれを晩ご飯と思ってOKしたなんて
 知るわけないよ。普通、いい年した女性が、一晩の意味も解らないなんて思わないからね」

と肩をすくめて笑った。

まあ、これ以上の揉め事はごめんだ。笠原さん新鮮で面白そうだったけど
外野でそうギャンギャン騒がれると興醒めだよ。

そういって立ち去ろうとした斉藤に堂上が殴りかかる。
しかし、流石に防衛員だけあって、斉藤はそれをギリギリでかわした。

「何もしてないのに、殴られる覚えはないよ。堂上ニ正。君が王子様の事
 そう目くじら立てて怒らなきゃこんなことにもならないんじゃないの?
 全部が全部僕のせいってわけじゃないでしょ。お互い様って事でいいだろ」


そういい残して、斉藤はさっさと公園の出口に歩いていった。


**********************************************************************

郁はその様子を呆然とベンチから見上げていた。

何が起こったのかと思った。

そして、斉藤が立ち去り
堂上と二人になって初めてずっと話をしていない事を思い出し身体が強張る。

堂上が近づいてきて、ビクリと身体が竦んだ。

「郁。何もされなかったか?」

思いがけない優しさに郁はコクリと頷いた。

その後にゴンッと思い切り拳骨が落ちた。

「何するんですか!?」
「このアホが!!あんな男にコロっと騙されて連れ出されやがって!」
「だって・・・・・。」
「だってなんだ」

郁は王子様の事を知りたかったから・・と言いかけて飲み込んだ。
堂上をまた怒らせて、ケンカをしたくなかった。

「なんでも・・ないです・・」
「お前は、そんなに王子様に会いたいのか?」

怒っているのとはまた違う真摯な眼差しで問いかけられ
郁は素直に答えた。

「あたしは・・ただ、お礼をいいたかったんです。助けてくれた事。
 その人のお陰であたしは図書隊に入って、大好きな本を守る仕事に就けた。
 大事な仲間にも会えて、素敵な恋人にも出会えて・・。すごくすごく幸せで。
 貴方のお陰です。って一言そういいたかっただけなんです」


郁はしょんぼりと俯いた。
堂上は、大きなため息の後、今度は郁の頭をポンポンと優しく叩いた。

「あのな、お前は自分が思ってるより有名だ。つまりその王子話だって知れ渡っている。
 もし、その王子様が図書隊にいれば向こうはお前の事をわかっている可能性が高い」

その言葉に郁が顔を上げる。

「じゃあなんで出てきてくれないんですか?」
「出てこれない。もしくは出たくない事情があるとは考えられないか?」
「・・・それは・・そうかもしれないですけど」
「たとえ、出て来なくても。お前がそれだけ騒いでりゃ、相手には伝わってる。
 お前がどれだけ真剣に本を図書館を守ってるか。仲間たちと楽しく仕事してるか
 見てるだろう。あえて、お前の前に出なくとも・・・な」


堂上の言葉に郁は素直に、ああ・・そうなのかな・・と思えた。

王子様が、探されたくない。と思っているとは考えたこともなかった。

でも、あり得ない話ではない。



郁はしばらく考えた後、静かに堂上に告げた。

「堂上教官。あたし王子様探しやめます」


堂上は驚いたように郁を見つめる。

郁の瞳は初めて会った時と変わらずまっすぐで透明で吸い込まれそうだ。

綺麗だ と思った。

視線が交わった後、郁の目が伏せられる。

「柴崎が、あたしが王子様憧れって言うと、教官より王子様が素敵って言ってるみたいに聞こえるって
 言われました。全然そういうつもりじゃないけど、教官はそう思ってるのかもって。」
「・・・・・・」
「あたし鈍くて、教官に嫌な思いさせてるとか思わなかったんです。
 王子様はあたしにとって特別で。でもそれは堂上教官に対する特別とはまた違う特別だから」

そういうと、郁は恥ずかしそうに今のあたしの王子様は堂上教官ですからと笑った。


こいつはまた、恥ずかしいことをシレっとと思いつつも顔が綻ぶ。
ごまかすように、どう贔屓目に見ても、俺は王子様の柄じゃないぞ。と言うと
充分カッコイイ王子様ですよと笑われた。



やはりこいつには負ける。

自分のちっぽけなプライドがつまらない物に思えてしまう。


堂上は郁を立たせ、そっと抱き寄せてからその腕に力をこめた。


「じゃあ、お前はお姫様だな」といたずらっぽく囁いてやると

バカな事言わないで下さい!と真っ赤になった郁に突き飛ばされた。



王子様はOKでお姫様はバカってどういう基準なんだ!と突っ込みそうになったが
それは、心の中で留めた。


堂上は真っ赤になった大事な【姫】の手を取って元来た道を歩いた。









アレ?手塚たちどこにいったの?ってつっこみはなしで。

公園を張ってた、手塚が堂上教官に携帯で連絡して間に合ったんですヨ☆

もちろん全員で茂みからみてましたよ。一部始終!
お約束です(笑)


そんで、柴崎あたりに【ちょっとあれは何の余興なのよ、アレは!】と突っ込まれていると面白い。


エピソード3はポチ様から頂いたリクエストを元にしています。
恐らく、リクエスト内容からは遠く離れていると思いますが、ポチ様へ捧げます

07:22 図書館SS(堂郁)

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