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想い

2008/05/14
たくさんの拍手ありがとうございます。

宜しければ、こんなの読んでみたいな的なコメントも残してもらえたら
可能な範囲で頑張りますね。

さて、本日は堂郁 夫婦設定 およそ3年経過イメージ 年齢フリーです。






今日の訓練を終えて、更衣室に向かう途中。
同僚の手塚から声をかけられた。

「おい。郁!」

結婚してから既に三年、結婚当時、苗字の変わったあたしをどう呼ぶか
手塚は散々迷った挙句、他の隊員同様下の名前で呼ぶようになった。


階級呼びをすればすみそうなものだが、普段から階級呼びはメンドクサイという玄田の一言で
郁の名前呼びが決定した。夫の篤としては面白くないようであったが・・・

大体先輩は皆「ちゃん」付けで呼んでくる。呼び捨てなのは同僚の手塚のみだ。
ちなみに玄田辺りは女堂上などと、とんでもないあだ名で呼んでいる。



「ああ。手塚。どうかしたの?」
「お前、なんかちょっとおかしくないか?」
「え?そう?」
「なんていうか、悩んでます!見たいな顔時々してるぞ」

ああ、鈍い。朴念仁と言われ続けている手塚に見抜かれるなんて
あたしは相変わらずダダ漏れなのか・・・。

しかしちょっと手塚に相談するのもどうなのか?!という
内容の悩みであったので、そんなことないけどね。と適当にかわした。

流石に長い付き合いだけあって、嘘だと気づいたようだが
手塚は、なんかあんなら柴崎にでも相談しろ。

と、さらっとフォローしてさっさと男子更衣室へ消えた。



***

軽くシャワーを浴びて着替え、事務室へと戻った。
今日はこれで終わりだ。

行動予定表に帰宅と記し
ふと見ると 堂上(篤)の欄は珍しく帰宅となっていた。

ここしばらく夫の業務は多忙を極め、午前様で帰ってくるとも良くあった。
自分は自分で、この春、手塚を班長とする新班の副班長となり
部下をフォローする立場となった。

もともと、構成成分に「うっかり」が多いせいもあり
色々と気を張っていなければならず、多少精神的に疲れて早めに寝てしまう事が多い。

夫と会話する時間が激減していた。

そういえば、いってきますというか行きましょうのキスや
おやすみなさいのキスも新婚の頃は毎日していたが
今ではほとんどしなくなってしまった。


前にキスしたのいつだっけ?



そんな事を思いながら、自宅である官舎へと足を進めた。

官舎までは早歩きで5分程度。

ただいまーとドアを開けると良い香りが漂っている。

「おかえり。あとちょっとでメシできるから、洗濯物頼む」
「はーい」

郁は部屋着に着替えると、取り込んだ洗濯物をたたんだ。

程なく、テーブルの上に夫特製の手料理が並べられ夕飯となった。

「おいしそう!いただきます!」
「今日はちょっと、味付け変えてみた」

と、凝り性らしい夫のオススメ肉じゃがを一口頬張る。

「あ、美味しい。なんか少し爽やかな甘み?」
「隠し味にコーラが入ってるんだ」
「え?コーラ?へえええ。」
「この間テレビでやってて試してみたかったんだ」

と、自作のコーラ肉じゃがを頬張り、満足そうに夫は頷いている。


「今日は早かったんだね。仕事大丈夫なの?」
「ああ、ちょっとひと段落したからな。もしかしたらまたちょっと忙しくなるかもしれないから
 今日は早めに切り上げた」
「そっか。ここの所、毎日遅いもんね。」
「まあ、通勤が5分てのがせめてもの救いだがな」
「そうだねー普通は電車で1時間とかでしょ?満員電車1時間なんて想像できないなぁ」


他愛もない会話をしながら、夕食は終了した。
食事は早く帰った方が作る。
食器は作ってもらった方が洗う。というのが堂上家のルールだ。

特別な事があれば臨機応変に対応しているが、基本ルールなので
今日は郁が食器を洗った。

その間、篤はテレビを見ながら食後のビールを楽しんでいる。


郁が洗い物を追えて、リビングに行くと、既にテーブルには2本の
空の缶が置かれていた。

「んもー。さっきゴハンの時も1本飲んだのに」
「いいだろ。たまに早い時くらい思い切り飲みたい」
「それはそうかもしれないけど・・・・」
「そういっている内にも、3本目の缶の中身が堂上の口の中に消えていった」

篤の隣に腰を下ろして一緒にテレビを見る。
篤は相変わらず、ビールを飲んでテレビを見ていた。
飲むペースは落としているが、手が止まる事はない。


「郁、先風呂入ってきていいぞ」
「そう?じゃあそうしようかな」


昔なら、こんな時は決まって篤の手が伸びてきて
キスの一つや二つはしていた。
大体、それじゃ止まらなくてお風呂に入る前にベッドに連れて行かれることも
しょっちゅうだった。


お風呂も、一緒に入ろうと無理に迫られた事もあったなぁと
何だかものすごく昔の事みたいに感じる。

篤も寝不足続きで疲れているのだろうと思うが
最近、二人でゆっくりしている時間が殆どない。


郁は湯船に浸かりながら、前したの・・いつだっけと遠い記憶を思い起こす。


あー・・・・。
ヤバイ。良く覚えてないけどたぶん余裕で4ヶ月くらいはしてないかも。

元々、自分は淡白な性質なのかそれほどまで求めるという事がなく
基本的に夫の誘いに応える形での生活だった。

新婚の頃はそれはもう1日と空けずに求められる事も多く
翌日、仕事の時は無茶させない。という約束をするほどだった。

1年過ぎる頃には、さすがに新婚ほどの頻度はなくなっていたが
それでも週三回くらいはしていた気がする。


それが、ふと気づけば
すっかりその類の話題が発生しない状態に陥っている。


まさか、あの夫と自分の間でこの状況が発生するとは想定外だった。
最初は忙しく疲れているのかと思って気にしないでいたが
流石に4ヶ月ってどうなんだろう。と思い始める。


色々本等を読むと、男が妻を誘わないのは他に相手がいる証拠。とか書かれているコメントが多いが
その辺りは夫を信頼している。

では、自分に女としての魅力がなくなったのだろうか・・・。

前と今と何か違っているか、なんとなく思い返してみた。

戦闘職種大女でクマ殺しでブラッディで・・・・・・
自分で思い出しても、元々【女としての魅力】なんてないかも・・・・・。

なんか、篤に乗せられてうっかり「魅力なんてないない」とか言いながら
「ちょっとくらいあるかも♪」と思っていた自分に気づいて撃沈した。

ハァ・・・・・・・・・・・・・・・。

深いため息が出るのはコレで何度めだろう。



やっぱり柴崎に相談かなあ。でも夫婦の事
あんまりしゃべるのもどうなのかなぁ。と思いながら
郁は寝間着に着替えてリビングへ戻った。


「篤さん。お先でした」
「おう。じゃあ、俺も入ってくる。疲れてたら先寝ておけ」

そういって、着替えを持つと篤はあっさりと脱衣所へと消えた。


***

結局、昨夜も何もなく、お休みと宣言されてあっという間に篤は眠りに落ちてしまった。


夫婦になるというのはそういうもので、いつまでも恋人・新婚みたいな状態は
あり得ないと頭では理解しているが一度気になりだすと止まらない。


篤がどう考えているか知りたくて堪らないが
そんな事をどう聞いていいのか解らない。

もう堂々巡りだ。

仕事中は努めて、その事は意識の外に締め出すようにしているが
仕事が終わり帰宅する段になると、またその事が思い出され憂鬱になる。


自分から誘って見ようと。意を決して篤を待ってみたが
電話でちょっと遅くなりそうだから先に休んでいてくれと連絡があり
空振りにおわった。


郁はなんだか居た堪れない気持ちになり、友人である柴崎へ電話をかけた。

3コール程呼び出した後に、聞きなれた友人がもしもしーと出てきた。

相談したい事があるんだけど、明日の夜とかあいてる?と聞くと
外飯1回でどお?といわれて苦笑する。
相変わらずだ。
了解と伝えて、電話を切った。


その日はなんとなく12時近くまで待ってみたが、篤は戻らず先に眠りについた。


***

翌日は内勤日だったので、一日巡回等館内業務をこなし特に異常もなく業務は終了した。

部下から日報を受け取ってチェックし、手塚に渡す。
明日は公休日だ。

ちなみに、明日は珍しく夫も公休日となっている。
公休はシフトなので、今やチームが違っている夫と公休日が重なるのは
1ヶ月に1度あればいい方だ。

そういえば、夫に今日は柴崎と外に出ると伝えてなかった事を思い出す。
事務室を見渡すが姿がみえない。

行動予定表に「会議」と書かれていた。

仕方がないので、夫の机に今日は柴崎と外で夕飯食べてくるので遅くなります。と書いたメモを置いた。

帰ろうと、席を立つと手塚に声をかけられた。
「おい。郁。今日柴崎と外でるんだろ?」
「うん。そうだけど」
「なんかあったら電話しろ。迎えに行ってやるから」
「過保護は上官譲り?ぷち堂上」

とからかい、了解~と事務室を後にした。

柴崎といい感じなんだろうな。なんだか羨ましい。
あの二人はこれから幸せがいっぱいなんだ。
私にも同じような時期があったなぁと懐かしく思った。

更衣室で外出用の服に着替えて、柴崎と図書館入り口で落ち合った。

最近柴崎が開拓してお気に入りだという和食メインの居酒屋に入った。
全室個室っぽく区切られていて、プライベートな空間が保たれているというのが
ウリのチェーン店だ。


値段も味も雰囲気もそこそこで、今度篤さん誘おうかなと思っている自分が可笑しくなった。
「それ」以外には夫とは関係が良好で今でももちろん大好きだし
夫も自分を大事にしてくれているというのは解っている。

夫婦って難しいなぁと大きなため息をついて柴崎に突っ込まれた。

「ちょっと。ほんと暗いわね。どうしたのよ」
「あー。ゴメン。ちょっとまた落っこちてた」
「手塚が気になるっていってたけど、こりゃ相当ね。何があったのよ?」
「手塚そんな事いってたの?ハァ。仕事中は出さないようしてるのになぁ」
「さっさと吐いて楽になんなさい」

どうせあんたの事だからいっぱいいっぱいのギリギリまで自分の中に
抱え込んでたんでしょうとズバリ指摘されて頭が下がった。


事の顛末を俯きながら柴崎に語った。
柴崎は茶化す事もなく真剣に話を聞いてくれた。

恥ずかしさも手伝ってお酒が進んでしまったが
軽めの物を選んでいるのでまだほろ酔いといった所だ。

一通り話終え、柴崎にどう思う?と聞いてみた。


「まず、あの人に限って浮気とかはあり得ないでしょうね」
「そうだよねぇ。」
「私の知ってる限りじゃ、立場的に今あの人多忙じゃない?それに4ヶ月前っていったら
 あんたはあんたで新班の副班長就任とかで色々バタバタしてたし。
 ただ、単にタイミングじゃないの?」
「うーーーでもさぁ。キスもないのよ?頭を撫でるとかはあっても、抱きしめてももらってない」
「・・・それは・・・確かにいくら忙しいっていってもちょっと気になるわね」
「でしょー?疲れてて出来ないとしても、キスや抱きしめるくらいなら1分もかからないじゃない?」

郁は、何だか話せば話すほど嫌な結論にたどり着きそうで
ひたすら、お酒を煽った。

「ちょっと。飲みすぎ!あんた倒れたら持ち帰れない!」
「じゃぁ手塚よぼうよー。なんかあったら連絡しろって迎えに来るっていってたよ。イイナァ」
「なんで手塚にあんた運ばせなきゃなんないのよ。旦那に連絡しなさい」
「イヤッ。どうせ仕事だよ」
「そんなんかけてみないと解らないでしょ?今日の事ちゃんと言って来たんでしょうね?」
「んー言いそびれたから、机にメモ置いといた。帰りがけ会議でいなかったから」
「まったく!あんた、もしメモとかどっかいっちゃってたら心配させるでしょ?」
「しないんじゃない?もう。別にあたしとかいなくてもいい感じだしっ」

すっかり郁は出来上がっていて、思考がマイナスになっている。
基本的にヘンな方向へ思考を転がす癖は昔から変わらない。

「じゃあ、手塚よんであんたの家まで運んでもらうけど。これは貸し1だからね」
「家に帰りたくない」
「は?何いってんのよあんた。私は男じゃないんだからそんな殺し文句いわれても何もでないわよ」
「そーゆー意味じゃな~~い。帰ったらまたヤな事ばっか考えちゃうもん」
「全く。じゃあどうすんのよ。朝まで飲むの?無理でしょ。あんた弱いのに」
「うーーー。じゃあ、柴崎の部屋泊めて。まだ二人部屋に一人でしょ?」
「ったく。仕方ないわね。じゃあ泊めてあげるけど、家には連絡しな」
「えー?」
「えーって当たり前でしょ」
「いーよー。しなくて。連絡。明日帰ったら謝る」
「バカッ。あんた帰ってこなかったらどんだけ騒ぎになると思ってんのよ」
「なんないよー」とつぶやいて郁はテーブルに突っ伏してスヤスヤと眠ってしまった。

話にならないので、とりあえず携帯を取り出し手塚を呼んだ。
手塚は予測していたのか、近くに出てきているからすぐに行くとの事だった。

その後、酔いつぶれている友人の夫に連絡を入れる。
2コールもしない内に電話に出てきた。

「もしも~し。お疲れ様です。堂上教官」
「柴崎か。どうした?何かあったか?」
「私は何も。ただ、そちらの奥さんが酔いつぶれちゃいまして」
「解った迎えに行く」
「あー、迎えはもう手塚がそこまで来てるんでいいです。入れ違っちゃう」
「そうか、すまなかったな。じゃあ入り口まで受け取りにいく。タクシー使え。俺が持つ」
「有難うございます。流石ですね。でも受け取りも大丈夫です」
「どういう意味だ?」

電話口の向こうで堂上の眉根が寄せられた事は間違いない。

「この子、帰りたくないっていうので今日は私の所に泊めます」
「帰りたくないってどういう意味だ?」
「そのままの意味みたいですよ。帰りたくない理由があるそうです」
「なんだそれは?!意味がわからん。詳しく聞かんと納得できん。郁は?」
「酔いつぶれて寝てます。ヤケになって飲んで潰れました。まあそっち着くまでには起きると思いますが」
「何があった?」
「それは私じゃなくて堂上教官の方が思い当たる事があるんじゃないですか?」
「つまり俺に会いたくないってことなのか?」
「みたいですね」

一瞬、沈黙が降りた。

「どういうことか、お前の知っている事を教えてもらう事はできんのか?」
「教えてもいいですけど。その代わり私への回答必須になりますよ」
「情報交換というわけか。仕方ないな。頼む」

先ほど郁から聞いた一部始終を堂上に伝えた。
堂上はただ黙って柴崎の報告を聞いて、最後にハァっとため息をついた。

「大体解った。すまなかったな。郁とはちゃんと話をする」
「私にもどういうことだか説明していただけます?」
「あー、そういう約束だったからな。郁に話す。郁から聞け。いいか?」
「了解。そろそろ手塚くると思うんで、タクシーで戻ります。」
「解った。入り口にいる。悪いが今夜はこっちで引き取らせてもらう」
「いいですよー。その代わり、今度の報告会分は私と手塚の分教官持ちってことで」
「わかった」

そういって電話が切れた。
丁度よいタイミングで、手塚が現れた。
タクシーを呼び、眠り込んだ郁を手塚がタクシーに乗せた。

基地まではせいぜい10分という所だ。

基地に到着すると、入り口で堂上が待っていた。
タクシー代を堂上が渡そうとして、手塚がそれを遠慮していた。

が、結局は押し切られてタクシー代を受け取っている。

「すまなかったな。柴崎。これは今日の会計分と情報公開料だ。手塚とでも飲め」

ザルな2人でも朝まで飲めちゃうんじゃないかという金額を柴崎に渡し
まだ半覚醒の郁を背負った。

それじゃあ、どうもな。と官舎に向かって堂上は歩いていった。

「なんとか、なりそうだったか?」
「んー?大丈夫じゃない?どうせお互いへんちくりんな事考えて想いが届かなかっただけでしょ」
「そーゆー話なのか?」
「まあ、決着したら話すわよ」
「解った。で?今日どうする?このまま戻るのか?」
「えー?私は外泊だしてるけどあんたは?」
「一応出してある」
「そうなの?じゃあこのままその辺で飲みなおす?カンパあったし」

嬉々として堂上から渡された札をカバンに放り込み
柴崎は歩き出した。

「お前なぁ。いくらなんでもあっさり受け取りすぎじゃないのか?」
「えー?いーじゃない。あっちは階級も上で手取りもいいんだし。
 可愛い奥さんの悩みを知れたんだから安いモンでしょー」


手塚は恐ろしい女だな。お前。といいながら柴崎の後を追った。


***

堂上は郁を背負って歩きながら、柴崎に教えられた
【郁の悩み】を反芻していた。


まさか、郁がそんな事で深く思い悩んでいるなどとは
全く予想外で、想像すらできなかった。

確かにここしばらくお互い多忙で疲れており
就寝時間も公休もあまりあわなかったのでご無沙汰ではあった。

そういう気持ちになる事はあったが、郁の業務状況も解っていたし
疲れ気味の様子が伺えたので誘う事をしなかった。

抱きしめて、キスをすればそこで止める自信はない。
間が開けば開くほど、一度して終わりにする自信もなくなり
迂闊に接触できなくなった。

郁といえば、淡白で自分から誘う事はほとんどない。
しばらくそういった接触がない事についても何も問われなかったので
気にしていないだろうとタカを括っていた。

逆に、郁は行為を望んでいないのに自分の欲求にあわせてくれていたのかと
落ち込んだくらいだ。
そう思うと、自分の欲求の為に郁を誘うのはますます躊躇われ
悪循環のまま、仕事に忙殺された。


先ほど、柴崎から郁が家に帰りたがらないという話を聞いて
バットで頭を殴られたような衝撃が走った。

自分は郁の表面ばかりをみて、そんなになるまで追い詰められている事に
全く気づけなかった。

今日、郁を柴崎の部屋に泊めさせればもう二度と戻ってきてくれない
そんな不安にかられ、無理やり引き取りを宣言した。


先ほどから背中で郁が、んー と身じろぎしている。
もうすぐ起きる兆候だ。


とりあえず部屋まで起きてくれるなよと思うが
状況はそう甘くなく、官舎入り口まであと少しという所で郁が起きてしまった。

「んっ・・・あれ?!」
「起きたか」
「篤さん?どうして?!」
「柴崎から連絡もらった」
「ヒドイ・・柴崎・・・」
「そういうな、俺が無理に引き取った」
「・・どうして?」

郁を背中から下ろし、向かいあった。
郁の瞳は不安に揺らいでいて、悲しみに満たされていた。

その瞳に堂上は胸が痛むのを感じた。

「郁。柴崎から聞いた。すまん。ちゃんと話したい」
「・・・・・。聞き出したんですか?」
「お前が帰りたくないといってると言われた。聞かずにいられなかった」
「ひどい。そんなの勝手に」
「悪かった」
「言い訳、させてくれ。流石に時間が時間だ。近所迷惑もあるし、部屋に戻ろう」
「・・・・・・」

近所迷惑といわれれば確かにこんな時間にここで言い争う事はできない。
ただでさえ筒抜けだ。

仕方なく郁は頷くと、郁の手を握り堂上は部屋へと急いだ。


***

部屋に戻ると、堂上は郁をダイニングテーブルに座らせ
温かいカフェオレを淹れてくれた。
堂上はコーヒーだ。

郁は俯いたまま何も言わない。
ただ、差し出されたカフェオレを一口飲んだ。

その甘さがじんわりと口の中に広がる。


「郁。まず最初に謝る。お前を悩ませた事と悩みを勝手に聞きだした事をだ」
「・・・・・・」
「すまなかった」
「別に・・・いいです。柴崎に口止めしてないし。悩みも私が勝手に気にしただけだから」

郁は顔が上げられなかった。
堂上の顔を見たら泣いてしまいそうだからだ。

「郁。俺がお前に何もしなかったのは嫌いとか浮気とか飽きたとかそういう事じゃない」
「疲れてただけ。 でしょ? 解ってます。だからいいです」

そういって郁が席を立とうとしたのを堂上が手を掴んで止める。

「最後までちゃんと聞け。抱かなかったのはお前が今どれだけ忙しくて
 微妙な立場の業務に必死に慣れようとしているのが解っていたからだ。
 俺もバタバタして帰宅が深夜になる事も多かったし。公休が重なる事もほとんどなかった。」

「それにしたって!キスや抱きしめるくらい。飽きてなくて好きだったらできるじゃない」
「そんな事したら止められないだろうが!」
「っ・・・。」

「抱きしめてキスをすれば、抱きたくなる。当たり前だろうが。」
「・・そんな事言わなかった」

「いえるわけないだろう。お前が気にすると思わなかったんだ」
「そりゃ・・あたしは鈍いですけど!」

「そういう意味じゃない。お前は基本的に淡白でしないはしないで構わないタイプと思っていたんだ。
 女にはそういうタイプが多いというのも聞いてたしな」
「確かに・・・いつも篤さんから誘われてばっかりだけど、でもそれは・・
 どうでもいいとかじゃなくて。恥ずかしくて誘えないだけで。それに誘う前には大体誘われてて」

「それも解ってる。ただ、こうやって出来ない時間が長くなればなるほどきっかけがなくなった。
 しかも、お前はそれを全然気にしていない様子だったから尚更だ。
 今までは俺の欲求にあわせてくれていた。と思ったら自分の欲求の為に疲れているお前を誘うのを
 躊躇うようになった」


その言葉に郁は驚いた様に目を見開いた。
まさか、夫がそんな風に思っていたとは思いもしなかった。


聞けば・・簡単な事だったのだ。
でも、適当な理由をつけて、相手の想いを自分で勝手に解釈し
自己完結した。




想いは言わなければ届かない。
それは恋人の時も夫婦になった今も変わらないのだ。


こんな当たり前の事、いつの間に忘れていたのだろう。
郁は泣いた。夫の前でこんな風に泣くのはどれくらいぶりだろう。

ごめんなさい。

言えなくてごめんなさい。

聞かなくてごめんなさい。

好き。

抱きしめて。

嫌わないで。

ずっと届けていなかった想いが堰を切ったように溢れ出す。

堂上は泣きじゃくる郁を強く抱きしめ
あやす様に背中を優しく撫でた。


俺こそ、すまん。

郁。愛している。

お前を抱きたい。抱かせてくれるか?

嫌なら嫌と。したいと思ったらしたいと言ってくれ。

お前の本当の気持ちが知りたい。



どこかで、途切れていた想いの糸が繋がる。

惹かれあう様に二人の唇が合わさる。
それは次第に深いものに変わる。

それは、一瞬の様でとても長い長い口付けだった。
名残惜しそうに、篤の唇が離れる。

そのまま、郁の耳元に唇を寄せ
熱く囁いた。

「郁・・今夜いいか?」

「お手柔らかに・・」

恥ずかしそうに、しかし、嬉しそうに笑う郁が愛しくて
もう一度優しく口付けた。

久しぶりの感触はとても柔らかい。

この場で押し倒してしまいたい衝動を抑え、堂上は郁を抱き上げベッドへと運んだ。





えーっとちょっとありえない展開なのかもしれませんが
倦怠期!?みたいな事も普通に夫婦していればあるかなーと。
まあこの二人の場合は甘甘の為の伏線としか見えないかも。


その後の話はリクエストがあればというコトにしておきます。
もちろんしょぼいR18傾向になりますが。

その後プリーズという方がいらっしゃったら
拍手パチパチ。コメントにその後!と叫んでいってくださいませ。(笑)
07:03 図書館SS(堂郁)

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